igaki.work

井垣孝之(弁護士/ブロックチェーンベンチャー/新事業創出・経営改革コンサルタント)。個人が、チームを変え、組織を変え、社会を変えるために必要な物事の考え方や、役立つ情報をまとめるブログです。

ブロックチェーンとコンサル、怒涛の2019年の振り返りと3つの学び

2019年はなかなか変化の激しい1年でした。

 

劇的に変化が激しくなったのは正確には2018年の12月からですが、一言で説明するとプロフィールに書いてあるとおりです。

 

2018年
銀座にオフィスを構えるブロックチェーンベンチャーのBINARYSTAR(バイナリースター)の事業立ち上げに参画。大阪からリモートでマネジメントし、1ヶ月半で事業を立ち上げる。「日本最大のブロックチェーン・ビジネスハブ」というコンセプトを掲げ、元マッキンゼーのパートナー・『ゼロ秒思考』の赤羽雄二氏とともに、大企業向けの新事業創出・経営改革コンサルティングを開始。

2019年
BINARYSTARにおいて、ブロックチェーンに関する技術・法律・ビジネスの講演を多数実施。毎月開催しているブロックチェーンビジネスアイデアソンの講師も担当。

弁護士業においては、大企業のプロジェクトを受託する「プロジェクト型企業法務」を本格化。大型の交渉案件の後方支援、「規制のサンドボックス」を用いた実証実験の提案、新しいビジネススキームの適法化、法務機能の受託といったプロジェクトを推進している。

 

ただ、これだけではなかなか伝わらないので、今年の振り返りを兼ねて私が何をしていたのか、そしてどうやって怒涛の1年を乗り切ったのかについて書こうと思います。

 

2018年11月 

 

大阪のブロックチェーン関係の会社のメンバーが、銀座でブロックチェーンベンチャーであるBINARYSTARを立ち上げるというのに誘われて、参画することにしました。

 

このときに元マッキンゼーのパートナー、『ゼロ秒思考』の赤羽雄二さんと初めて出会いました。彼はBINARYSTARのアドバイザー兼コンサルタントとして参画しており、私も同じような形で参画しました。

 

この段階では正直この会社はブロックチェーンで何をするのかがよくわかっていなかったのですが、赤羽さんが主導してキックオフをやり、私自身も自分でいくつか事業を立ち上げた経験からいろんなアドバイスをしていました。

 

2018年12月~2019年1月

 

BINARYSTARのオフィスは、一度来ていただくとわかりますが、銀座1丁目にあるキラリトギンザの1フロア、約1000平方メートルを借り切ったおしゃれなスペースです。

 

・フロント

f:id:geniusroots:20191228145638j:plain

 

・オープンスペース

f:id:geniusroots:20191228145646j:plain

 

なぜベンチャーが多い渋谷ではなく、銀座1丁目にこんなものが作られたのかというと、日本の大手企業が集まる丸の内の近くで、ブロックチェーンの社会実装により日本の企業の競争力を上げるというミッションを掲げているからです。

 

このオフィスは12月に完成し、メンバーが入居しました(それまでは新橋の仮オフィス)。ただ、赤羽さんと私を除いたBINARYSTARのメンバー4人は全員20代で、ビジネス経験もそこまでなかったため、具体的な事業計画、収支計画、ビジネスモデルといったものがまだ固まっていませんでした。

 

そこで赤羽さんから依頼を受けて、私が12月14日から全部取り仕切って進めることになりました。

私自身はこれまで6つの事業を自分で立ち上げたことがあるので、たぶんなんとかなるだろうということで引き受けたのですが、大阪からリモートでかつ弁護士業をやりながら新事業を立ち上げるというのは、なかなか大きなチャレンジでした。

 

また、2月1日にオープニングセレモニーをやるということが既に決まっていたので、1月半で、事業計画と収支計画の策定、管理部門・営業部門・HPを含むマーケティング部門の立ち上げと並行して、オープニングセレモニーの企画・集客をやりました。また、オフィスのネットワーク・システム関係も整備しました。

 

私がやっていた具体的な作業としては、社労士と契約して雇用関係の整備、税理士及び外部のパートナーと提携して経理・出納体制の構築、営業資料や会員プラン、各種規約の作成、事業コンセプト作成、HPのワイヤーフレーム作成、コピーライティング、プレスリリースの執筆、ネットワーク関係の要件定義、オープニングセレモニーの企画、対外的な折衝、これら以外のすべての作業のマネジメント、メンバーのトレーニング、あらゆることについての意思決定といった感じです。

 

これまでの起業・経営、弁護士業、システム開発の仕事の経験を総動員させたという感じでした。

 

なお、これらと並行して、12月中の弁護士業は各種示談交渉や顧問先の対応以外に、大規模な案件の交渉支援、無罪を争う刑事事件の尋問練習・本番といった重ための対応もやっていました。

 

この頃はさすがにストレスと疲労で首がバッキバキで、めちゃめちゃきつかったです。それでもなんとか乗り切れたのは、赤羽さんの的確なアドバイスと、BINARYSTARのメンバーの献身的な働きのおかげです。改めて感謝ですね。

 

2019年2月~3月

 

 BINARYSTARの事業コンセプトは、日本の企業にブロックチェーンを実装していくための場所である「日本最大のブロックチェーン・ビジネスハブ」と銘打って、2月1日に大々的にオープニングセレモニーを開催しました。

 

f:id:geniusroots:20191228154753j:plain

 

私は司会進行・全体のマネジメント・講演を担当しましたが、大企業の方を中心に300名超の方にご来場いただき、大盛況のうちに終えることができました。具体的な内容は、イベントレポートで。

 

オープニングセレモニーが終わった後は、ひたすらコンサルティングの案件開拓です。当初、BINARYSTARのメインのビジネスモデルは、赤羽雄二さんの経営コンサルティングを軸としたブロックチェーン導入コンサルティングを考えていました。

 

しかし、この当時はまだ、ブロックチェーン導入という提案は箸にも棒にもかからない状態でした。

実際にたくさんの企業の人とお会いして話をしましたが、まだ日本の企業のマネジメント層のみなさんは、ブロックチェーンをそもそも知らないか、言葉としては知っていても自分の会社にどう活かすかの検討をしていないため、ブロックチェーン導入の提案がまったく刺さりませんでした。

 

そこで、3月末の時点でピボットし、ブロックチェーン導入の提案は諦めて、新事業創出のコンサルティングの方にシフトしました。

 

2019年4月~8月

 

 3月末から、毎月1回、「ブロックチェーン・ビジネスハッカソン」を始めました。これは、2日間でブロックチェーンを用いた事業計画書の第1版を作るというイベントです。

 

赤羽雄二さんは、これまで20社以上のベンチャーの共同創業をしており、これまで何度もビジネスプランコンテストの審査員やご自分での開催もされているため、彼に企画していただきました。

 

最初は私も「2日で事業計画、しかもブロックチェーン縛りなんてできるのか?」と思っていたのですが、これが意外となんとかなるんですね。2019年12月までに10回開催しましたが、最後の発表時までまとまらなかったチームは1チームもありません。

 

しかも、このプログラムは0から事業を立ち上げてスケールさせるまでにやるべきことを全部考え、その場で赤羽さんと私がフィードバックするので、ブロックチェーンのビジネスの活用の仕方のみならず、ビジネスの基礎的な素養を一気に学べるというコストパフォーマンス抜群の企画です。

 

f:id:geniusroots:20191228161909j:plain

 

ベンチャーの方や、大企業や官僚の方が個人的に参加されるなど、非常に多種多様な参加者の方がおられました。

 

2020年1月以降も開催するので、興味ある方はぜひ満席になる前にお申し込みください。

 

blockchainbusinesshackathon202001.peatix.com

 

blockchainbusinesshackathon202002.peatix.com

 

また、2020/2/28には、1周年記念イベントも開催します。こちらも興味がある方はぜひお申し込みください。


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000040830.html

 

8月までの間に新事業創出コンサルティングのクライアントを複数獲得することができ、本格的に経営コンサルティングに踏み出すこととなりました。

 

このころ、弁護士業の方では、一般民事や顧問先の対応と並行して、主に上場企業向けに、規制のサンドボックスを用いた新事業を提案して内閣官房との折衝も含めてプロジェクトマネジメントをやる仕事であったり、グレーなビジネスモデルを法的に問題ないように作り変えて、なおかつ顧客に提案しやすいようにするといった仕事を新たに始めたりしていました。

 

2019年9月~12月

 

9月からはBINARYSTARに新しくCEOが就任したので、私は経営からは少し離れ、赤羽雄二さんとの新事業創出・経営改革コンサルティングに注力しました。

 

赤羽雄二さんのコンサルティングの特徴は、マッキンゼーのように、コンサルタントがクライアントに張り付いて、リサーチから立案まで全部やってあげるというようなものではなく、マッキンゼーコンサルタントのような仕事ができる人材を育てることにフォーカスしていることです。

 

まず、仕事のスピードを3倍に上げ、意思決定の速度と精度を上げるトレーニングを徹底的にやります。そのスピード感で、新事業を立ち上げるために必要なことを全部教え、週1回のミーティングと日々のメールの中でフィードバックし、どんどん新事業を作っていきます。

 

そうやって戦闘力の高いメンバーを育てて、一気に他の部署の生産性向上・人事制度改革・管理職の意識行動改革・変化できる組織文化作りに着手します。

 

赤羽雄二さんのコンサルティング手法については、詳しくは彼が書いた以下のブログ記事をご覧ください。

b-t-partners.com

 

また、BINARYSTARの経営コンサルティングとは別に、個人的に中小規模のクライアントからも経営コンサルティングを受けました。そのうち、働き方改革コンサルティングでは従業員が21時過ぎに帰っていたのを、19時までに帰れるように改善できましたし、売上・利益を増やすことが課題だった会社では、新プランの創設と客単価の向上を実現しました。

 

さらに、私が大阪弁護士会側でプロジェクトマネジメントをしている基幹システムと会員専用サイトの開発が終わってテスト段階に入ったため、ひたすらバグチェックや弁護士会と業者との間の調整をしたりしていました。

 

2019年に学んだ3つのこと

 

こうして書き出すと、ほとんどBINARYSTARの仕事をやっているように見えますが、実際には弁護士業が6割、BINARYSTARが3割、それ以外が1割という感じです。

また、さすがにBINARYSTARの立ち上げ時は土日も夜も仕事していましたが、5月以降は基本的には平日の9時半~19時しか仕事していません(たまに夜にミーティングが入ったり土日にイベントが入ったりはしますが)。

 

なぜそんなことができたのかというと、以下の3つの学びを実践したからです。

 

①:『ゼロ秒思考』のA4メモ書きの実践

 

赤羽さんの『ゼロ秒思考』自体は出版当時から知ってはいたのですが、その内容は実践していませんでした。

 

しかし、彼と一緒に仕事をするようになってA4メモ書きを実践するようになると、頭の中のもやもやが消え、意思決定の精度と速度が格段に上がりました。

今でもほぼ毎日数ページは書くようにしていますし、なにか企画したりするときは必ずメモ書きをしていますが、シンプルながら非常に有用なツールだと思います。

 

②:アウトプットイメージ作成アプローチ

 

これも赤羽さんから学んだことですが、新事業の立ち上げをリモートでやろうと思うと、メンバーが私にぱっと相談することが難しいため、マネジメントの難易度が上がります。たとえば、これまで報連相のトレーニングを受けていない人が、今日の業務についてきちんと報連相をしてくれ、と言っても、なかなかできません。

 

そこで、どんなことでも、タスクを依頼するときには「こんな感じのアウトプットを出してほしい」というイメージをパワーポイントやワードなどで作っていました。

 

これをアウトプットイメージ作成アプローチと呼びますが、上司から部下にタスクを依頼する場合に起こりがちな①タスクの定義が曖昧、②部下がタスクの内容を勘違いしている、③実は上司も自分が依頼したタスクのアウトプットイメージがないといった問題を防ぐことができます。

 

このやり方は、リモートでチームマネジメントをするのに大いに役立ちました。

 

③:制約を逆手に取るために、まずは制約をかけてみる

 

今年の一番の学びは、「制約を逆手に取れ」だと思います。先ほど基本的には平日の9時半~19時しか仕事していないと書きましたが、そのようにしているのはそれ以上仕事すると体力が保たないからです。

必然的に弁護士業に割ける時間は減りましたが(現在は週に2~3日しか事務所にいません)、その制約の中でも売上につなげる方法を模索した結果、大企業のプロジェクトを着手金または月額固定+タイムチャージで受ける仕事を創り出し、昨年よりも収入は増えました。

 

ある意味、平日の9時半~19時しか仕事をしないという時間の制約を設けることによって、生産性を上げたと言えます。

 

たとえば、ここまでBINARYSTARの仕事について書いてきましたが、実は私は銀座のオフィスには月に3~4回程度しか行っていません。

これは1~2月の立ち上げ時も同じです。日々のマネジメントは基本的にすべてリモートでやり、イベントがあったりお客さんがいらっしゃるときのように、物理的に私がいなければならないときだけ行く、というようにしていました。

 

多くのマネージャーは、現場でメンバーが顔を合わせることを好みますが、「メンバーが顔を合わせる」というのは、実は通勤やコミュニケーションの時間が増えるという点で、リソースの無駄遣いになっていることがよくあります。

 

そして、そのような気付きは、「そもそも移動や会議はしない」という制約をかけないと、なかなか得られるものではありません。

 

ただし、組織において「制約をかける」というのは、立場が下の人はなかなかできないので、立場が上の人が進んで実践する必要があります。

 

2019年を振り返って

 

以上、ざっと2019年を振り返ってみましたが、我ながらなかなかハードな1年だったなと思います。同時に、多くの学びと経験も得られました。

 

また、BINARYSTARのメンバーはみんな大きく成長し、大部分は任せても日々のルーティンとプロジェクトが進むようになりました。毎日9時半から、その日何をやるかを共有するミーティングをやっているのですが、今年のはじめは毎回「いやいや、ちょっと待って」と言って具体的にどうすべきかを指示していましたが、最近は私が口を挟むことはほとんどなくなりました。

 

マネージャーがほとんどオフィスにいないというのは彼らにとってやりにくいところもあったと思いますが、それでもきちんと育ってくれてとても感謝しています。

 

その他、赤羽さんの下での経営コンサルティングでの学びや、2020年に何をするかなどについては、また別途書いてみたいと思います。