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井垣孝之(弁護士/ブロックチェーンベンチャー/新事業創出・経営改革コンサルタント)。個人が、チームを変え、組織を変え、社会を変えるために必要な物事の考え方や、役立つ情報をまとめるブログです。

マルチカード時代の生き抜き方と、キャリア戦略のまとめ【最終回】

第1回~第6回まで、30代以降の方のこれからのキャリアについての考え方について書いてきました。

 

知らないと損する!30代以降のキャリアのフレームワーク【第1回】 - igaki.work

30代以降のキャリアの大きな方向性の決めるワーク【第2回】 - igaki.work

生産性を圧倒的に上げる、フィールドと仕事の選び方【第3回】 - igaki.work

仕事のコントロール領域の拡大が、キャリアを決める。【第4回】 - igaki.work

効率よくキャリアアップするための社内業務戦略の立て方【第5回】 - igaki.work

上を目指すために必ず知っておくべき、4つの問題解決のレベル【第6回】 - igaki.work

 

最後に、今の時代における「正しいキャリア」について書きたいと思います。

 

「マルチカード」の時代の生き抜き方

個人が時代の変化に対応せねばならない時代

 

昨今、ITを中心とした技術革新により、事業環境の変化が早くなり、それに伴って人生環境の変化も早くなりました。

 

そんな時代に、「このキャリアを歩めば人生安泰」というような「キャリアの正解」はありません。「この会社に入れば一生安心」なんて会社はありませんし、「弁護士になれば大丈夫」という時代でもなくなりました。

 

今あるのは、「その時点におけるキャリアの最適解」のみです。つまり、時代の変化に対応して自分のキャリアも変化させ、最適な結果を出し続けることが必要です。

平成の途中くらいまでは、会社が時代の変化に対応していました。しかし、それが難しくなってきたため、これからの時代は、個人で時代の変化に対応しなければならなくなりました。国レベルでも個人の責任で対応する方向に制度を変えていっているので、この流れはもう止まりません。

 

そんな時代に必要なのは、状況に合わせた最適解を出す能力です。

 

最適解を出すには?

 

最適解を出すには、複数のカードを持ち、状況に合わせて最適なカードを切ることです。カードの切り方は、1枚だけではなく、複数のカードの組み合わせでも構いません。

複数のカードがあれば、組み合わせのパターンが増えるので、変化に対応しやすくなり、最適解を選びやすくなります。

 

たとえば、私が現在持っているカードは、こんな感じです。

 

 

内容が重複していたり、 弁護士や経営の中に包含されるカードが入っていたりしますが、とりあえずこんな感じです。

私は、これらのカードを場面に応じて組み合わせて切っています。

たとえば、新事業創出コンサルティングの中で、クライアントに初期のアイデア出しをしてもらう場面では、マーケティング・問題解決・セミナー講師・ファシリテーションといったカードを総動員します。また、これまで自分で立ち上げた事業も、基本的には上記カードの組み合わせです。

 

カードは、一度切った組み合わせを途中で変えることもよくあります。たとえば、新事業創出コンサルティングで事業が具体化してくると、セミナー講師のカードを引っ込めて法的側面の検討のために弁護士のカードを切ったり、ステークホルダーとの交渉といったカードを切ったりします。

 

このように、状況が変化した場合に切るカードを差し替えることができると、その状況に応じた最適解を出しやすくなります。

 

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オールマイティーのカードはない

 

1つ注意していただきたいのが、「どんな場面でも威力を発揮するカード」というものはないということです。たとえば、弁護士というカードも、非常に使えるカードのように思われがちですが、ある特定の場面で使えるカードのひとつでしかありません。

逆に、弁護士というカードは強力なため、他のカードの効力がなくなることがあります。たとえば、「弁護士さんは法的な話を相談するものだから、ビジネスの相談はしない」と思われがちなので、マイナスになることもあるのです。

また、交渉事に弁護士が出ていくと、当事者が頑なになって交渉がスタックしてしまうこともよくあります。

 

強力なカードは、副作用も大きく、それによって結果が出せなくなることもよくあります。逆に使い所が難しいのです。

 

そもそも、カードの強い弱いというのはその状況や周りの人が持っているカードとの関係で相対的に決まります。したがって、絶対的に強いカードというものは存在しないのです。

 

 同じことしかやっていなければ、最適解は出せるようにならない

 

よく専門性が重要と言われます。確かに少なくとも1つは「この専門です」と謳える何かを持っておくことは大切です。

 

しかし、「それしかやっていない」人は、周りの環境が変わった瞬間、自分の価値がなくなることがあります。たとえば、交通事故専門を謳う弁護士は今は数多くいますが、自動運転が普及し、交通事故の絶対数が減り、重症の被害者が減ると、一気に潰しが効かない弁護士になるでしょう。

会社員でも同様で、会社から言われたことだけしかやってこなかった人や、ある特定の業務だけやってきた人は、既に転職が難しくなっています。職務経歴書に書くことがないからです。これは、特に40代以降の転職で明暗がくっきり分かれます。

 

このようなことになるのは、持っているカードの数が極端に少ないからです。人から言われたことだけやっていたり、特定の何かしかしていないと、自分のカードが増えないため、環境が変わったときに取れる選択肢が少なく、最適解を出せないのです。

 

"Connecting Dots"では足りない

 

ご存じの方は多いと思いますが、ステーブ・ジョブズが2005年にスタンフォード大学で行った、有名な祝辞があります。

  

 

ジョブズは、大学中退後も、カリグラフィーの 授業を受けていました。彼のその経験がMacintoshに美しいフォントを搭載することにつながり、Appleがデザインの分野で広く受け入れられることにつながりました。

 

これは大切な考え方だと思います。他方で、単に”dots”を増やすというアプローチだけではこれからの時代についていけないと感じています。

 

なぜなら、”connecting dots”が起こるのはたまたまであって、そこには戦略的な意図がないからです。偶然何かと結びつけばいいね、という考え方では、あまりに無駄が多すぎるのではないでしょうか。

 

それよりも、「特定の場面で価値を提供できる」ことを意図した「カード」を増やすことをおすすめしたいと思います。

 

まずはカードの種類を増やそう

 

カードの枚数を増やすと、こんな感じで組み合わせの数が等比級数的に増えます。カードが増えれば増えるほど、あなたの希少性は増し、取れる最適解の数が増えていきます。

 

1枚の場合は1通り

2枚の場合は3通り

3枚の場合は7通り

4枚の場合は15通り

5枚の場合は31通り

6枚の場合は63通り 

・・・

10枚の場合は1023通り

 

もちろん、カードを増やせといってもそんなに簡単には増えません。増やすコツがあります。

 

カードを増やすコツ

 

まずは今、自分がやっている仕事を「カード化」しましょう。「カード化」というのは、要は「自分はこんなことができます」「この仕事でこんな実績を出しました」と言えるということです。「自分の仕事を職務経歴書に書けるか」という話と同じです。

 

ある仕事を「カード化」できたら、次はその周辺の仕事を「カード化」しましょう。たとえば、経理であれば管理会計、法務なら人事などの他の管理部門、営業なら営業企画といった感じです。

 

言われたことしかやってないと、なかなかカードの枚数は増えません。カードを増やすには、自分がやったことのない領域にチャレンジすることが必要です。

 

カードは、戦略的に増やす

 

手当たり次第にカードを増やすことには大きなデメリットがあります。すべてが中途半端になったり、「今まで何してきたの?」と一貫性のないキャリアのように見られてしまうのです。

 

そこで大切になってくるのが、第1回で書いた自分のキャリアの方向性や、仕事のフィールド(第3回)、問題解決のレベル(第6回)といった考え方です。

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大きな方向性が決まっており、その中で領域を定めて問題解決のレベルを上げていれば、ほぼ確実に一貫性があるというように見られるため、さきほど書いたデメリットを避けることができます。

 

このように、ぜひ戦略的にカードを増やしていってください。

 

30代以降のキャリア戦略のまとめ

 

最後に、30代以降のキャリアの連載についてまとめておこうと思います。

 

現在の30代は、あと50年近く仕事をし、さらに変化が早くなる時代を生き抜かねばなりません。こんな時代で、将来を予測するなんてことは不可能です。10年後の未来を予想することも難しいでしょう。

 

そのような時代においては、自分が何をしたいのかという大きな方向性と、どんな強みを持っているのかを把握することがさらに重要になります。そして、多くのカードを持ち、そのときどきの状況に合わせてカードを組み合わせ、最適解を出し続けることが必要です。

 

そして、これからの時代は、出し続けた最適解の蓄積が、キャリアになります。

 

どのカードがいいかなんて、誰にもわかりません。だからこそ、カードを増やして組み合わせの多様性を増加させ、創造的な問題解決ができる準備をしておくことが大切になってきます。

 

これからますます、複雑な問題を迅速に解決できる人材の需要は増え続けます。キャリアをらせん状に成長させ続けるには、日々の仕事の中で今までやったことのない業務に挑戦し、会社の中で誰も拾っていないボールを拾って問題解決し、クライアントにさらなる価値提供をしていくしかありません。

 

これからのキャリアは、自分のカードを切って解決できた問題の質と量で決まります。ただ任される仕事をやるだけの人の価値は、どんどんAIやロボットに置き換えられていきます。

 

ぜひ、自分が仕事にかける時間を戦略的に使い、周りの人や顧客にさらなる価値を提供し続けて、自分が望むキャリアを手に入れましょう。

 

<ここまでの連載>

知らないと損する!30代以降のキャリアのフレームワーク【第1回】 - igaki.work

30代以降のキャリアの大きな方向性の決めるワーク【第2回】 - igaki.work

生産性を圧倒的に上げる、フィールドと仕事の選び方【第3回】 - igaki.work

仕事のコントロール領域の拡大が、キャリアを決める。【第4回】 - igaki.work

効率よくキャリアアップするための社内業務戦略の立て方【第5回】 - igaki.work

上を目指すために必ず知っておくべき、4つの問題解決のレベル【第6回】 - igaki.work

 

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。キャリアについては私自身試行錯誤しているところなので、ぜひディスカッションさせていただければと思います。以下からお気軽にコンタクトしてください。