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井垣孝之(弁護士/ブロックチェーンベンチャー/新事業創出・経営改革コンサルタント)。個人が、チームを変え、組織を変え、社会を変えるために必要な物事の考え方や、役立つ情報をまとめるブログです。

人生と社会を変える武器としての「問題把握力」

今日から仕事初め。年末年始に「今年こそ仕事を頑張って収入を増やそう!」と決意された方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、このような決意をされた方は、年末に「結局今年もあまり収入変わらなかったなあ」と思っていませんでしたか? おそらく、あなただけではないと思います。なぜ、そうなってしまうのでしょうか。

 

一言でいうと、「収入を上げる」という課題がどんな問題なのかを理解して行動することができていないからです。適切に問題把握ができていないために、「仕事を頑張る」という、あまり問題解決につながらない決意をしてしまっているのです。

 

まず、これがどういうことか、ご説明したいと思います。

 

「収入をどうやって上げるか」問題の把握の仕方

 

「仕事を頑張って収入を上げる」と考えている人は、頭の中でこんな風に問題を把握していると思います。

 

仕事を頑張る→上司が評価してくれる→給与査定アップ→収入が増える

 

もちろん、この問題把握の仕方は、間違いではありません。しかし、このような問題把握の仕方だと、以下のような、自分では如何ともし難いハードルが立ちふさがります。

  • 何を頑張れば評価されるのか
  • 上司は本当に評価するのか(評価されなかったらどうするのか)
  • 上司が評価したら給与査定は本当に上がるのか(評価はされていても会社にお金がなければ給与は上がらないのではないか、評価とは関係なく他の人とのバランスで給与が決められるのではないか)
  • 給与が上がっても微々たるもので、ほぼ変わらないのではないか

 

このようなハードルがある時点で、「仕事を頑張ることで収入を上げる」というアプローチ以下「頑張るアプローチ」といいます。)は、筋が悪いのです。

 

それではどのように問題把握すべきでしょうか。実はすでに過去に記事を書いているのですが、普通の会社員の方が給与を上げるためには、「自分の給与がどのように決まっているか?」という観点から問題把握するのがおすすめです。

 

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詳しくは上記記事をご覧いただくとして、ポイントは、次のとおりです。

 

  • 給与は、会社の投資余力(≒利益)と従業員への投資意欲でレンジが決まる
  • 会社の投資余力または投資意欲が少なければ、従業員が頑張っても給与は上げられないし、レンジの範囲内でしか変動しない
  • 会社の利益は、市場環境に大きく依存するため、安定的に伸びているまたはこれから伸びる市場で勝負する会社に転職した方が、給与は上がりやすい

 

これを、「頑張るアプローチ」に対して、「マーケットアプローチ」と呼ぶことにします。

 

頑張るアプローチとマーケットアプローチの問題把握の違いは?

 

この2つは、問題把握の仕方がまったく異なります。

 

頑張るアプローチは、目の前の仕事をとにかく頑張れば給与は上がるという、とてもミクロな把握の仕方であるのに対して、マーケットアプローチは、まず給与の源泉は会社の利益であるという、会社全体の利益の分配という視点で収入を把握し、さらに会社の利益をマーケット全体の動向から俯瞰する、マクロな把握の仕方です。

 

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また、頑張るアプローチは、給与が上がる根拠は、他人(上司)の意思に依存しているのに対して、マーケットアプローチにおける給与が上がる根拠は、給与が発生する構造に依存しています。

たとえば、会社における給与のレンジは、他人の意思ではなく、その会社の利益や今後の見通しから決められているため、直接的には上司の意思は関係ありません。

 

構造の力は、非常に強力です。

業界である構造ができあがっている場合は、1つの会社が対抗することは難しいですし、会社の中に構造があれば、1人の従業員がそれを変える、たとえば業績を上げた従業員に対して、給与テーブルを無視した報酬を上げるといったことは、まず起こりません。

 

このように、よりマクロな視点から構造的に「収入をどうやって上げるか」問題を把握すると、見え方がまったく変わってくるのです。ちなみに、私が個人的に転職をサポートした人は、業界やその会社の分析をすることで、全員の転職後の年収が上がっています(今のところ一番大きい上がり幅は150万円)。

 

どちらを選ぶかは自由です。ですが、少なくとも2つの考え方があることを知っておけば、より良い方を選ぶことができます。

 

よりマクロに、より構造的に問題を把握するにはどうすれば?

 

ご自分の給与を、上記のマーケットアプローチのような考え方で把握したことはなかった、という方はおられるのではないかと思います。それではどうやったらマーケットアプローチのような把握の仕方ができるようになるのでしょうか。

 

それは、端的に言えばリベラルアーツを身につけて、答えのない問題を解決しようと試行錯誤すれば、できるようになります。

 

リベラルアーツは、Liberal Arts、すなわち自由になるための技のことをいいます。一般的には教養と言いますが、上で書いたようなマーケットアプローチは、損益計算書が読める程度の会計知識と、マーケティングの知識の両方を使っています。

まず、これらの教養がなければ、マーケットアプローチのような問題把握の仕方は絶対にできません。

 

また、単に知識があるだけでも無理です。会計やマーケティングの勉強をしても、上で書いたような給与の上げ方への応用方法は絶対に教えてくれません。

マクロに構造を分析しようという意思を持って、どうやったら給与が上がるかを考えてみるということをやってみない限り、マーケットアプローチのような考え方はできるようにならないと思います。

 

問題把握力のトレーニングは、自分と社会に大きな変化をもたらす

 

今回は、いろんな方に興味を持ってもらいやすい、収入というテーマで問題把握力の分析をしてみました。

 

私は、問題把握力はどうやったら上げられるかについて、とても興味を持っています。というのも、適切に問題を把握できれば、8割方問題は解決したようなものだからです。

逆に、問題把握力がない、または把握しようとしないと、都合の悪い真実から目を逸らすことになり、放置された問題は、やがて自己増殖して連鎖的に問題が拡大します。もし会社に、臭いものに蓋をする上司がいる方は、このイメージがわかるのではないでしょうか。

 

また、昨日、私が日本の刑事司法の闇について書いたところ、大きな反響をいただきました。弁護士にとっては常識と思われることを書いただけではあるのですが、一般の方にはあまり知られていない、かつかなりショッキングな内容だったので、多くの方に興味を持っていただけたようです。

 

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刑事司法の問題は、今これを読んでいるあなたにとっても他人事ではありません。ある日突然、警察に疑いをかけられてしまったり、突発的に犯罪を犯してしまうということは、誰にでもあることです。そうすると、必ずこの刑事司法の闇を見せつけられます。ほとんどの方はこれを知らないので、実際に自分が留置所に入ることになると、大きなショックを受けます。

 

これは、私たちの社会の問題です。まず、そもそも問題がある、ということを知らなければ、絶対に解決することはできません。また、問題を解決するための武器としてのリベラルアーツがなければ、問題を把握することができません。何より、問題を自分の問題として解決しようという意思が重要です。

 

 

問題把握力のトレーニングの仕方は、いい書籍が見当たらないため(もしご存じの方がいれば教えて下さい)、自分自身のトレーニングのためにも、今後継続してテーマとして取り上げていきたいと思います。